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シリーズ11 2012年5月発信
モンテッソーリは世界の共通語
全世界で実践されているモンテッソーリ教育
新しい年度が始まって一ヵ月半あまり。現場では新入園児達も新しい環境に慣れてきた頃でしょうか。
4月下旬から5月上旬に掛けて、台湾とオーストリア、チェコを訪ねてまいりました。台湾は東アジアのモンテッソーリ教育関係者の集まりでした。オーストリアとチェコは毎年日本モンテッソーリ教育綜合研究所が行なっている海外視察旅行のコーディネーターとして行ってまいりました。
モンテッソーリ教育は現在世界にある190ほどの国の内、130カ国くらいで実施されています。実践園の数は30,000~35,000と言われています。その内の2,000ほどが日本に存在するモンテッソーリ実施園です。1907年に誕生してから105年目を迎えますが、一世紀を超えて衰えるどころかますます盛んにこの教育は実践されるようになりました。私個人は、これまでに南アメリカ大陸と南極大陸以外の数多くの国を訪れてきましたが、どこに行ってもモンテッソーリ教育は実践されていました。まさに「モンテッソーリは世界の共通語」を実感します。日本では現段階ではモンテッソーリ教育は就学前、つまり、小学校に上がる以前の幼稚園や保育園で実践されていますが、欧米ではモンテッソーリの小学校はもとより、大学レベルまでモンテッソーリ教育は実践されています。
モンテッソーリマフィア
105年の歴史を持つわけですから、その長い時間の中でモンテッソーリ教育を受けて、世界中に名の知られるようになった人物も数多く存在します。そういった人達のことを「モンテッソーリマフィア」と呼びます。マフィアはもともとイタリアの血縁を基盤にした強力な犯罪組織のことですが、モンテッソーリマフィアはもちろん犯罪とは無縁です。社会に強い影響を与えるという意味でここではマフィアということばが使われています。
何人かをご紹介しましょう。
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン ― Google.com の創業者
ジェフ・ベゾス ― Amazon.com の創業者
ジュリア・チャイルド ― 料理家。最近彼女の自叙伝が映画化されました。
キャサリン・グラハム ― 新聞ワシントン・ポストのオーナー兼エディター
ジャクリーン・ケネディー・オナシス ― 故ジョン・F・ケネディー大統領のファーストレディー
ウイリアム王子とヘンリー王子 ― 英国のロイヤル・ファミリー
アンネ・フランク ― アンネの日記を書いた少女
ジョージ・クルーニー ― 映画俳優
ジミー・ウェールズ ― ウィキペディアの創立者
などなど枚挙に暇がありません。ノーベル文学賞を受賞した作家や、オリンピックでメダルを獲得したフィギィアスケートの選手、画家や建築家、歌手など職種も多岐に渡ります。アメリカのオバマ大統領を初めとした政治家にも数多くのモンテッソーリ教育経験者が名を連ねています。国際連盟の提唱者であるアメリカ大統領だったウッドロー・ウィルソンはホワイトハウスの地下の一部屋をモンテッソーリ教具で環境構成し、モンテッソーリ教師の資格を取った娘さんに実践させていたこともあります。私の大好きな音楽、カントリー&ウェスタンの大物であるウィリー・ネルソンはテキサスの自宅の牧場の一画にモンテッソーリ・スクールを建ててしまったほどです。
詳しくどんな人がモンテッソーリ教育の経験者として活躍しているかをお知りになりたい方はインターネットでMontessori and Googleを検索して見ましょう。「えっ、彼も、彼女も」といった感じでモンテッソーリ教育がもっと身近になりますよ。
モンテッソーリマフィア達
(Montessori and Google画像より)
モンテッソーリマフィア達は確かにモンテッソーリ教育の宣伝になります。ただ、同時にはっきりとさせておかなければならないことは、モンテッソーリ教育を受ければ誰でもがこのような有名人になれるわけではないという点でしょう。
モンテッソーリ教育では「環境」を重視し、整備された環境のもとで、子どもは持って生まれた自己教育力(自らの力で育っていく原動力)を発揮し、自立に向けて成長を遂げていきます。しかし、その到達点は一人ひとりの人間によって異なることも事実です。超一流のベースボールプレーヤーであるイチローと同じ練習環境で、同じ練習をしたからといって全員がイチローにはなれないのと同じことです。一人ひとりには持って生まれた才能や資質があり、それは個人個人で異なります。大切なことは、その一人ひとり違う才能がモンテッソーリの環境で最大限に開花する可能性があるという点でしょう。だからこそ、モンテッソーリ教育は全ての子どもに公平に育つチャンスを与えるのです。全ての子どもには、一般の幼稚園や保育園の一斉画一の保育の中では枠にはまらず、なかなか自己実現ができない子どもや障害を持った子どもももちろん含まれます。一般のモンテッソーリ教育現場ではどちらかというとそういった子ども達こそがモンテッソーリ教育によって救われているのです。
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