R2年 小学生クラス説明会

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園長からのメッセージ

シリーズ4 2009年12月発信

今年も余すところ僅かとなりました。子どもの家の朝の会では毎日、その日が何月何日何曜日、お天気はどうかをボードで伝えていきますが、時の流れを感じてもらうために日めくりカレンダーを使っています。12月のこの時期になると日めくりカレンダーも残すところ数ミリの薄さになり、子ども達も年がもう少しで終わることをはっきりと意識するようです。
さて、12月13日は子どもの家の講演・勉強会を開催いたしました。今回の講演ではモンテッソーリ教育理論の話ではなく、モンテッソーリ教育理論と近年解明されてきた脳についての話をリンクさせて食のあり方、玩具の選び方、男の子と女の子の違いについてお話させていただきました。特に、男の子と女の子の違いについては皆様興味深く聞いてくださったようですので今回は配布した資料を基にお話した内容をお伝えしたいと思います。


男の子と女の子の違い

1. 遺伝か環境か

 男の子、というか男性と女性は絶対に違います。どちらが「優」でどちらが「劣」であったり、どちらが「良」でどちらが「悪」という問題ではありません。ともかく違う存在です。「政治的に正しい」ことを目指す現代社会においては、性別や、人種を差別せず、技能や適正、能力において男女差はないことになっています。
 しかし、男女に違いのあることは、人類学者、生物学者を初めとする科学者には常識でした。「政治的に正しい」ことが強調されて、あえて世間には知らせてこなかったのです。この違いは育つ環境によるというよりも生得的な要素、つまり生まれながらの遺伝的な要素の方が強く影響しています。
 私たちは男の子と女の子の違いを前提にして子どもに接することで、子どものより良い育ちが期待できると思っていますし、モンテッソーリがこの違いをどのくらい意識していたかは定かではありませんが(時代的に言って男女の違いが脳科学の観点からはまったく示されていませんでしたから意識はしていなかったでしょう)、モンテッソーリ教育現場には「違い」を前提としてどの子どもにも公平に成長の場を与えています。
 進歩した脳科学によって、現在では男性と女性の脳では科学的、構造的に判明しているだけで100以上の違いが存在しています。そして、この違いがあまり表に現れないことによって実は今日、「多くの男子が学校や人生でうまくやっていけない。男の子は危機に直面している!」とアメリカなどの国では言われています。日本ではまだあまりクローズアップされていませんが、多かれ少なかれ近い内に問題提起が成されてくるはずです。「なぜ男の子なの?女の子は大丈夫なの?」という疑問が当然わいてくるでしょう。子育ての大きな割合はお母さん、つまり女性が担うからです。保育園や幼稚園、小学校の先生の性別を考えてみてください。圧倒的に女性が多いでしょう。男の子は女性の脳で考えられる想定外のことをいとも簡単にやってのけるのです。

2. 男の子の特質(傾向)

 生まれた瞬間からというわけではありませんが、以下の項目は男の子の成長と共に多かれ少なかれ出現する姿です。

危ないことが好き                   ことば数が少ない
競争心が強い                     人間関係が女性ほど強くない
攻撃的(けんか好き)                 他人よりも自分のやりたいことを優先する
固執する                         空間認知力が強い
衝動的                          一人を好みがち
行動的 - 動くことが好き              投げ出したり、飽きっぽい
動く物が好き                       論理的に考える
大きな動きの運動が好き

 いくつか取り上げてみましょう。

 ・ 危ないことが好き
 男の子の多くはリスクを伴うことを楽しむ傾向にあります。ほかの男の子が危ないことをして、うまくやってのけたときには大いに賞賛します。女の子はあまりそういう傾向はありません。男の子は自分で動き回れるようになった瞬間から危なっかしいことをします。コンセントに指を突っ込もうとしたり、ボールの上に載って立とうとしたり、椅子から飛び降りようとしたり・・・。親がやめさせようとしてもなかなか言うことを聞きません。ですから、男の子は女の子よりも、おぼれる、自転車で転んで怪我をする、気から落っこちて怪我をするという割合が高いのです。これがずっと続くとなるともちろん問題ですが、そういう傾向は確かに存在します。これは後で述べますが、危険な行動は、「闘争・逃走」反応の引き金になり、多くの男の子にぞくぞくするような、抵抗しがたい興奮をもたらします。

 ・ ことば数が少ない
 言語をつかさどる脳の領域は男の子と女の子では大きく異なります。これは成人になっても同じです。男性は言語活動をほとんど脳の左半球で行いますが、女性は左半球だけでなく右半球にも言語をつかさどる領域があります。女性がおしゃべりが好きなのはこのためです。男性同士の電話の会話は用件のみで数十秒で終わりますが、女性同士は用件以外のことで話が数分、時には数十分に渡ります。(数時間の場合も・・・)
脳の性差は年齢が低いほど大きいことが判明しています。幼児期では口げんかでは男の子は女の子に絶対かないません。男の子の一言に対して、女の子は数十言返します。ですから男の子に、「今日は子どもの家で何してきたの?」とたずねてもなかなか埒が明きません。ことばで説明することが生来的に苦手だからです。根掘り葉掘り聞かれること自体、あたかも尋問されているようで男の子は快く思っていません。これは思春期になってくるとより顕著になってきます。学校から帰ってくるなり、自室に引きこもる男の子が多くなります。お母さんは学校で何か問題が会ったのではないかと心配してつい、部屋に入り込み質問し始めます。これは男の子にとっては「ウザイ」以外の何者でもないのです。放っておいて、見守っていてあげましょう。あなたの子なら大丈夫です。
幼児期の男の子には「自分のことばで言ってごらん」という聞き方はあまり有効ではありません。なぜなら男の子は自分のことばを持っていないからです。「どんな気持ちなの?」と聞くのではなく、「何を考えているの?」とか、「どうしたいの?」といった聞き方が有効でしょう。
ちなみに、男女のコミュニケーション回数の違いを見てみましょう。コミュニケーションとは発する単語数や単語にならない声や音、ボディーランゲージのことです。一日平均で女性は20,000回、男性は7,000回です。女性は男性の約3倍しゃべるということです。あごに障害を起こす確率は女性は男性の4倍というデータが出ています。

・ 固執する
こだわりです。女の子以上の男の子はひとつのことにこだわります。子どもの家でも毎回同じパターンで活動をする(同じお仕事を繰り返す)男の子が数多く見られます。大人は(特に女性は)ついつい、「もうそれは何回もやったから違うことしようよ。」と言いがちですが、これも脳からの指令による傾向の一つです。ちなみに「オタク」は100%に近い数字で男性です。この事実も男が固執することを如実に物語っています。周りに迷惑をかけなければ固執することは大いに結構です。そもそもモンテッソーリの言う「集中現象」はこの固執することの表れでもあります。

・ 空間認知力(認知能力)が強い
 男の子が女の子に勝る能力の一つに空間認知力があります。空間にある物の位置関係や、距離、動体視力などもこれに関係します。つまり、これは見ることで「目」と大いに関係する能力です。こんな実験がありました。新生児にゆっくりと動くモビールと若い女性の顔写真を見せるとどう反応するかというものです。男の赤ちゃんは圧倒的に動くモビールを見るのですが、女の赤ちゃんは圧倒的に女性の顔を見ます。女の子は生まれつき人の顔の方に興味を持ち、男の子は生まれつき動く物の方に興味を持ちます。実は、生まれながらにして男の子と女の子では目の作り、と言うか見え方が違うのです。ちょっと専門的な話になりますが、目の網膜は光を神経シグナルに変換する器官です。ここには光受容細胞である「桿状体(かんじょうたい)」と「錘状体(すいじょうたい)」という部分が含まれています。桿状体(かんじょうたい)とつながっている細胞は「あれは今どこにあって、どこへ行くのか?」という問いに答えるべく働きます。錘状体(すいじょうたい)とつながっている細胞は「あれは何か?」という問いに答えるべく働きます。人間の網膜には性ホルモンの受容体が豊富に存在することがこの20年で判明しました。男の網膜に主として分布しているのが桿状体(かんじょうたい)とつながっている細胞です。この細胞が最も感知するのが「位置、方向、速度」です。女の網膜に主として分布しているのが錘状体(すいじょうたい)とつながっている細胞です。この細胞が最も感知するのが「色と質感」です。したがって、人間でもサルでも女の子やメスが動くトラックよりも人形を好み、男の子やオスがその正反対なのはそのように育てる環境の影響ではなく、生得的な要因からなのです。こういった違いを無視して、一律に同じことを課すだけの教育は誤りであることは一目瞭然です。
 この違いは絵を描かせても如実に現れます。女の子は物を描き、色使いも鮮やかです。男の子は動きを描き、色は単色や、黒、青、灰色、銀といった色を好んで使います。網膜の細胞の違いのなせる業です。
 モンテッソーリのお仕事は基本的に自由選択です。ピンクタワーや茶色の階段といったブロックや積み木などで立体的なものを創造するの圧倒的に男の子です。

3. なぜこういった違いが存在するのか

 これは人類の進化の過程を振り返ることによって判明します。原始時代、男は危険だらけで油断できない外の世界に出かけては、自分の命を賭けて狩猟をしました。もちろんそれを洞窟に持って帰って女と子どもに食べさせるためにです。猛獣や敵から家族を守るのも男の役割です。こうして危険が一杯の世界で長い距離を自由に動き回るための感覚や、動く標的を確実にしとめるための視力や能力が何百万年も掛けてはぐくまれてきました。今でも釣り人やハンターは男性ばかりです。つまり、男の役割は基本的には食料調達と危険から家族を守ることでした。一方で女の役割も明確でした。子育て係です。このことで進化の方向も明確になり、子育てに見合った能力をどんどん発達させていったのです。女性が言語能力に長けていることも表情が男性以上に数多く表出することも全部子育てに必要な要素だからです。
 人生の出発点で築かなければいけないことは基本的信頼関係の構築です。これは 人と結びつく力であったり、人間関係や同調性とも言えるでしょう。生まれた瞬間から微笑んで生まれてきた赤ちゃんを受け入れる。豊かなことば掛けによって、生まれてきた子どもが愛されていること、受け入れられていることを実感することによって基本的信頼関係は構築されていきます。家族の間にはいつも団欒があり、笑顔が絶えない。そういった生後の環境と生得的に備わった要因がうまくミックスされて初めて健全な育ちが期待できるのです。
 男は子どもを生むことはできません。これは女性だけに与えられた神聖な役割です。だからこそお母さんの役割は非常に重要です。そして、お母さんには女として、子育てに、基本的信頼関係の構築のために必要とされる笑顔という表情やことばの能力が男性以上に与えられているのです。これを上手に子どもに与えていかないと残念ですが子どもは逸脱して行ってしまいます。しかし、その逸脱の原因は子どもにあるのではなく、子どもを取り巻く大人にかなりの割合で責任があるということです。
 原始時代から1960年代くらいまでは古代から続いてきた男女の役割分担がそのままほとんど踏襲されてきました。その行動パターンはそれぞれの親から学んだことですし、その親達も両親の姿から学んできたはずです。さかのぼって行けば原始時代の洞窟での生活にたどり着くでしょう。けれども現代はその役割分担が消えてしまいました。親世代の経験があまり役に立たなくなってきました。時代の流れではありますが、こうなってから様々な子育ての問題が噴出してきていることも事実です。私たちの生は私たちの世代だけのものでは決してありません。人類の発生からずっと継承してきたものを無視することはできませんし、私たちの後の時代にも引き継がれていくものです。自分よがり、独りよがりになるのではなく、謙虚に先達から学ぶ姿勢も重要でしょう。



生徒募集のお知らせ
子どもの家では新しいお友達を募集しています
 今回の講演での「男の子と女の子の違い」は、10月のアメリカで開催されたモンテッソーリの国際大会で、あまりにも多くの発表がこの題材を取り上げていたことに端を発します。帰国してから何冊かの脳に関する最新の情報が載っている本を読んだり、調べている中で確信しました。やはりモンテッソーリ教育は時代を超えて子どもの育ちに非常に大きな貢献をするということです。モンテッソーリ教育の重要性を再認識しました。一人でも多くの子どもにこの教育を経験してもらい、そのよさを獲得していって欲しいと切に願います。
 子どもの家では1歳代のお子様から小学生まで生徒を受け入れる準備が整っております。お気軽にご連絡ください。
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